優れた技術があっても、医療現場の課題やニーズに合致していない、医療現場のスペックに不適切であるなどの理由から、医療応用(実用化)が難しい事例は多く、技術を有する多くの企業でもこの問題に直面しています。当研究室は、医療現場のニーズを出発点として問題の解決策を提案し、医療現場で最終製品をイメージして最適化開発を行い、イノベーションを実現する「バイオデザイン」という考えに基づいて医療機器やプログラム医療機器の開発を心掛けています。ディスポーザブル極細内視鏡もバイオデザインに基づき開発された医療機器です。
腹膜透析は在宅透析を可能とし、医療経済的にもメリットのある治療法です。しかし、腹膜が経年劣化し重篤な合併症を引き起こす場合があるので、5年程度で中断を強いられています。現状では腹膜の状態を確認するためには、開腹手術若しくは腹腔鏡による観察といった患者負担の大きい方法しかありません。腹膜透析患者は、透析液を注入するチューブを常に腹膜に挿入した状態にあります。当研究室は、この細いチューブを通して挿入し、非侵襲的に腹腔内を観察する極細内視鏡を複数の大学と共同で開発しました。多くの医師の意見を基に、医療現場のスペックに適した外径約1mm程度のディスポーザブル製品です。順天堂大学、東京慈恵会医科大学で承認のための検証試験(医師主導治験)を実施しました。
本医療機器は、従来の消化器系の内視鏡とは異なるコンセプトで開発されたもので、胃瘻チューブ、尿道バルーン、気管チューブ、注射針からの挿入が可能で、様々な臨床的有用性も期待できます。2022年12月に厚生労働省から薬事承認されました。